訪日タイ人観光客の最新動向
日本政府観光局の発表データから、訪日タイ人が増える時期は例年4月と10月~12月であることが分かっています。
■4月(ソンクラーン):タイのお正月であるソンクラーン休暇(大型連休)があり、この時期に桜などの花を見に訪日する人が増えます。
■10月〜12月(紅葉・冬):紅葉、雪景色といった日本の景色を楽しみに訪れます。特に12月は、前国王ラーマ9世生誕記念日の祝日や年末年始休暇を利用した旅行者が増加する傾向があります。
一方で最も人気が低いのが8月です。タイは年間を通して暑い国であるため、旅行先として敢えて一年で最も暑い時期の日本を避けたい、というのが主な理由だと言われています。
<訪日タイ人 月別・年別 訪日客数推移(2023年〜2025年)>

●レンタカー利用で自由度の高い旅が好き
またここ近年の傾向として訪日タイ人のレンタカー利用率が高くなってきています。観光庁が発表した訪日外国人消費動向調査(2024年)によると、訪日タイ人のレンタカー利用率が12.1%という結果が出ています。これは香港、シンガポール、台湾に次ぐ4位であり、訪日外国人全体の平均利用率7.7%と比較しても非常に高い数値を示しています。
海外でのレンタカー利用には多少なり不安がつきものですが、タイ人にとって日本でレンタカーを利用したくなる理由があります。
■運転環境:日本とタイは同じ左側通行、右ハンドルという共通点があり、他国に比べて運転の不安が少ない
■車文化:タイは日常のちょっとした移動にも車を用いるほどの「車社会」である
■リピーターのニーズ:訪日リピーター層を中心に、公共交通機関ではアクセスしにくい場所や、より自由度の高い移動を求める
■大人数による利便性:三世代旅行など大人数での移動が多いタイ人にとって車移動は利便性が高く、トヨタの高級バンなどが絶大な人気を集めている
ソンクラーンで人気のスポット5選
2026年のソンクラーン(タイのお正月)は4月13日〜15日。公的な祝日と週末を合わせて5連休となる予定です。タイでは4月が一年で最も暑い時期のため、「涼しい気候と日本の桜」という非日常的な体験を求める訪日タイ人が年々増加しています。特に、大人数での自由な移動を好むリピーター層には、公共交通機関ではアクセスしにくい地方の絶景スポットが人気を集めています。この絶好のタイミングに、訪日旅行を検討しているタイ人に人気の高い「タイでは見られない桜」と「タイでは体験できない涼しい気候」を満喫できる、注目のスポットを5選ご紹介します。

ソンクラーンの時期はタイが一年で最も暑くなるため、涼しさを求めて4月中旬〜下旬に見頃を迎える東北地方の桜が人気です。中でも日本らしい懐かしい風情の残る温泉地とセットで巡るツアーを選ぶ傾向にあります。

富士山と桜を同時に鑑賞できる富士山周辺は唯一無二の絶景スポットです。なかでも、タイ国内で「忠霊塔(チューレイトウ)」の愛称で親しまれている山梨県富士吉田市の新倉山浅間公園は、富士山と桜、そして五重塔(忠霊塔)が揃った「これぞ日本」の象徴的な景色であり、訪日タイ人にとっての聖地にもなっています。

4月中旬に開通する立山黒部アルペンルートでは、高さ20mに迫る雪の大谷が出現します。タイでは決して味わえないこの非日常体験は、SNS映えも抜群で、暑さから逃れたいタイ人にとって最高の避暑地です。

「一目千本」と称される奈良県にある吉野山は、山全体を埋め尽くす約200種3万本の様々な種類の桜が例年4月中旬に見頃を迎えます。その壮大な景色と歴史的な魅力から、特に関西地方を拠点とする訪日タイ人リピーター層に人気です。なお、奈良は東大寺大仏や春日大社の鹿といったスポットが、信仰心が厚く動物好きのタイ人の国民性に合致しているため、タイ人旅行者から根強い人気を集めています。

九州地方はタイからの直行便が多数就航しており、アクセスが良好です。特に、レンタカーを利用して由布院、別府、阿蘇といった著名な温泉地をめぐる周遊ルートは定番となっており、豊かな自然と温泉を求める旅行層から高い人気を集めています。
今回の人気スポットに加え、日本の各地域にはまだ多くの魅力が溢れています。タイ正月である4月のソンクラーン休暇などの旅行タイミングや、タイ人の嗜好を的確に捉え、その地域独自の魅力を訴求するプロモーションを展開することがおすすめです。特に、4月の訪日タイ人をターゲットとしたプロモーションは、需要が高まる前の2月〜3月頃に実施することで、より効果が得られやすくなります。
王室に関する動向がタイ人旅行に与える影響は?
2025年10月24日に、国民から「タイの母」として深く敬愛されていたシリキット王太后陛下がご逝去されたことは、タイ全土の国民感情に大きな影響を与えています。これを受け、タイ王国政府は国家服喪期間を設け、国民の哀悼を促す以下のガイドラインを発表しました。
■国旗掲揚: 全ての政府機関などは、10月25日から30日間、国旗を半旗掲揚
■公務員等の服喪: 公務員や政府職員などは同日から1年間、喪に服します
■一般国民への推奨: 国民は追悼と敬意を表すため、90日間、黒または地味な色の服装をするよう推奨されています
引用:タイ国政府観光庁日本事務所より(https://www.thailandtravel.or.jp/news/155837/)
一方で政府は、日常生活および観光活動を通常通り継続する方針を発表しています。しかし、タイ王室が国民から敬愛されていることから、深い敬意と哀悼の意を示すため、多くの国民が自発的に娯楽的な活動を控え、各種イベントや催しが中止・縮小される傾向にあります。この動向は、海外旅行の需要にも影響を及ぼす可能性が考えられます。
国民から絶大な敬愛を集めていたプミポン前国王陛下崩御時(2016年)には、国民の関心が追悼に集中した結果、旅行や娯楽への関心が一時的に低下しました。
そのため、DiGJAPAN!ではこの動向を重視し、今後も訪日外客数の推移などを注視しながら、タイ市場の状況について継続的に情報提供を行ってまいります。
2016年プミポン国王崩御された際にまとめた記事はこちら
【トピック】プミポン国王崩御 訪日タイ人観光客への影響とSNS対策まとめ

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