今回は、JNTO(日本政府観光局)が発表した「世界22市場の国外旅⾏者を対象としたアンケート調査の結果」から、リピーター層の厚い台湾、伸びしろの大きいタイ、そして今まさに「日本熱」が高まっている米国という、3つの市場に焦点を当ててトピックを紹介します。
1. 訪日旅行の「ポテンシャルとリピーター層」
アンケートは2024年10月~12月にかけて実施され、世界22市場(韓国、中国、タイ、米国、英国など)の国外旅行者を対象に、旅行意向や日本の地方に対するイメージなどを調査したものです。この調査結果から、世界各国・地域の旅行者が日本に何を期待し、地方でどのような体験を求めているのか、市場ごとに異なる具体的なニーズを把握することができます。
まず最初に注目すべきは、各国・地域で異なる訪日経験の差です。
●台湾: 訪日4回以上の「超リピーター」が半数(45.8%)
●タイ: 未訪日層が62.4%と高く、新規需要の成長が期待される市場
●米国: 訪日経験者が半数超(52.9%)。欧州(英国18.8%等)に比べ日本への関心が極めて高い
2. 次に行きたい場所の候補リスト
国外旅行経験者を対象に実施した「今後⾏きたい・次に⾏きたい旅⾏先」のアンケート結果から、日本は多くの市場で圧倒的な支持を得ていることが分かります。
●台湾:今後行きたい(60.4%)、次に行きたい(45.8%)の両項目で日本が1位。2位の韓国を大きく引き離す
●タイ:今後行きたい(66.5%)、次に行きたい(52.2%)ともに日本が1位。2人に1人以上が日本を候補に
●米国:中長距離旅行先で日本が1位(今後21.5%・次12.0%)。共にイタリア(9.5%)や英国(6.4%)を上回る
◾️なぜ米国で日本がイタリアを抜き「今後行きたい・次に行きたい旅行先」の1位になったのか
大きな要因の一つは、円安による圧倒的なコストパフォーマンスの高さです。欧州主要国で物価高やオーバーツーリズムの影響が広がる中、米国人旅行者にとって日本は、かつての「物価が高い国」のイメージから「手頃な価格で質の高い体験ができる国」へと変化しました。そのほかSNSを通じた日本食ブームの広がりや、アニメ「鬼滅の刃」 や「呪術廻戦」 「ONE PIECE」、ドラマ「SHOGUN 将軍」のヒットによる日本文化の広がりも日本を訪れるきっかけの一つになっています。
3. 国外旅行の「主な目的」
国外旅行の主な目的に注目すると、市場ごとに優先順位の明確な違いが見て取れます。各地域で最も回答率が高かった目的は以下の通りです。
地域ごとの1位の訪日目的
●東アジア(台湾等)
ガストロノミー・美食(55.0%)
「食」が旅の最優先事項となっています。
●東南アジア(タイ等)
テーマパーク(46.0%)、 庭園・花鑑賞(42.3%)
自国にない自然風景やレジャー施設への関心が強いのが特徴
●米国(欧米豪等)
アート鑑賞(36.2%)、ラグジュアリーホテル(31.6%)
歴史探訪を含め、地域の文化や滞在の質を重視する傾向
◾️米国人が求める「アート鑑賞」とは?
米国人の求めるアート鑑賞とは、単なる美術館巡りに留まりません。日本では香川県にある直島のベネッセハウス ミュージアムに代表される「自然や建築、作品が一体となったアート」が人気です。また、新潟県の「大地の芸術祭」のように、地域の課題をアートで解決しようとする取り組みも、欧米層から強い関心を集めています。
4. 日本の「地方エリア」に対する認知と意向
東京や大阪だけではなく地方への関心も高まっていますが、認知されている地方には市場ごとの特性があります。
●台湾:全22市場でトップの地方認知度
地方認知度:95.1%
エリア別:北海道(77%)、沖縄(65%)、九州(60%)、関西(59%)
日本各地の魅力が幅広く浸透している「インバウンド成熟市場」
●タイ:北海道への一極集中とその他エリアの認知は途上段階
エリア別:北海道の認知が67%と圧倒的(自国にない「雪」のイメージが定着)
リピーターを中心に、関西・関東・中部など「その土地ならではの季節感」を求めて訪問先が拡大中
●米国:地方認知は発展途上
地方認知度:アジア圏と比較すると依然として低い状況
エリア別:関西(28%)、関東(24%)、中部(23%)、北海道(22%)
特定の地域に集中せず、関心が広域に分散しているのが特徴
◾️米国人が注目する「サムライルート」と「ドラゴンルート(昇龍道)」
サムライルート:歴史的な町並みと伝統文化を巡るルート
名古屋(または松本)から飛騨高山、白川郷を経て北陸へ至るルートで、江戸時代の宿場町や古い町並みが色濃く残っています。地域に根付いた伝統工芸や生活文化に直接触れられる施設が多い点も評価されています。
ドラゴンルート:多様な自然景観を巡る周遊ルート
中部地方を南北に縦断し、能登半島へ至るルートです。白川郷の原風景に加え、立山黒部の山岳景観から能登の海岸線まで、日本特有の多様な自然を一度に体験できる点が特徴です。
いずれも、その土地の風土に根ざした暮らしや地域の歴史を体系的に学べる点が、米国層のニーズに合致しています。
5. 地方で期待される「体験」
最後に、日本の地方に対してどのような体験が期待されているのかを地域別に整理します。
地域ごとの主な期待
●東アジア(台湾等)
ゆっくり過ごして心身を癒やす(38.6%)
日常を離れたリラックスやリフレッシュを主な目的とする傾向
●東南アジア(タイなど)
ゆっくり過ごして心身を癒やす(44.7%)、その地やその季節でしか味わえないような旬な体験(44.3%)
自国にない雪や桜、紅葉といった「季節感」を味わうことが醍醐味
●欧米豪など
歴史や文化を深く知る(37.0%)、地の人との交流(35.3%)、ディープな日本を味わう(35.2%)
歴史・文化の学びや地域住民との交流を通じたディープな日本体験
◾️米国人が求める「地の人との交流」を形にする
米国人が求める「交流」とは、単なる店舗での接客を通じた触れ合いにとどまらず、地域の一員として迎えられる体験を指します。地元農家との食事会や伝統工芸の工房での職人との対話、地域を知り尽くしたガイドとの対話など、「交流を仕組み化」することが、地方における欧米圏の満足度を高めるポイントとなります。
まとめ:データに基づいたターゲット戦略を
今回のJNTOの調査結果から分かるのは、市場ごとに「日本に求める魅力や体験」が明確に異なるということです。台湾には「より深い地方体験」、タイには「憧れの風景」、米国には「文化・歴史・安全な冒険」と、それぞれ期待する価値が異なります。今後は、市場ごとのニーズに応じたストーリー設計や情報発信が、インバウンド施策の成果を左右する重要な要素となりそうです。
<関連リンク>
JNTO アンケート調査結果より [出典:観光庁] 2026年4月28日公表

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